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01

Sep. 2022

スペシャリストに学ぶ

9月号 「こんなところにもカビが生える(レンズ、宇宙ステーション)」

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今月は、微生物としてのカビの生命力の強さについてお話をしましょう。

 

地球46億年の歴史の中で、カビを含む菌類は約10億年前に誕生したといわれています。私たち人類が誕生したのは約20万年前ですから、カビたちは、私たちが知らない太古の昔から、激変する地球環境に適応し、みごとに生き抜いていたつわものたちの集まりです。

そんなカビたちは、生態系の中で植物や動物の遺体を分解して土に返すという大きな役割を担ってきました。物質循環の土台をしっかり支え、動植物が繁栄する豊かな生態系を作ることに貢献してきたのです。

 

そんな生命力の強いカビたちですから、我々の生活環境の中でも思いがけないものに生えて驚かされることがあります。

 

たとえば、メガネやカメラなどの光学機器のレンズです。食品や紙、木材はわかるとして、とても栄養源になりそうもないレンズにカビが生えるとは、いったいどういうことでしょう。それは、カビはレンズそのものを栄養源にしているのではなく、レンズに付着した手垢やホコリなどの汚れを栄養源にして生えているのです。

レンズに生えたカビ

レンズによく生えるカビとしては、コウジカビの一種であるカワキコウジカビやアスペルギルス・レストリクタスなどがあります。これらのカビは、ほんの少しの栄養源と湿気(=水)があれば、比較的乾燥した環境でも生えることができます。プラスチックやアルミサッシ、タイル、ビニール、金属なども同様です。直接栄養源にならないものでも、汚れと湿気などの環境次第で、カビが生えてしまうことはよくあります。

栄養と水があればレンズにもカビは生える

 

もうひとつご紹介しましょう。

宇宙ステーション「きぼう」の実験棟では、船内でカビ・酵母の種類と数がどのように変化するのかを、2008年の打ち上げ時から7年間にわたって調べました*)

といいますのも、旧ソ連が1986年に打ち上げた宇宙ステーション「ミール」では運用期間の終盤、船内の電子機器などに多量のカビが発生し、不具合が生じる原因のひとつになったという反省からです。宇宙ステーションは完全な密室ですから、宇宙飛行士の健康にも影響があるかもしれません。

今回、「きぼう」で、500日、1000日、1500日、2500日でそれぞれ機器表面のカビ・酵母数を調べた結果、やはり、0個、10個、24個、151個と次第に増加していることがわかりました。一方、カビの種類は少なく、ヒトの皮膚の常在菌であるマラセチアと、あとは地球上の環境でよく見られるカビ・酵母が十数種類見つかった程度でした。宇宙ステーションのカビ・酵母はすべて、地球上から持ち込んだものですが、ヒトが生活できる空間では、たとえ微小重力であろうと宇宙放射線が降り注いでいようと、地球上のカビも十分発育できるということです。

未来の宇宙旅行においても、やはり、カビ予防対策を怠ることはできないようです。

宇宙で増えるカビ

*)https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/1348-0421.12931


 

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執筆者プロフィール

北海道大学獣医学部ご卒業後、旧大阪府立公衆衛生研究所において、女性で初めてとなる副所長兼感染症部長を務められた。現在は、日本防菌防黴学会理事、日本食品微生物学会理事など多方面でご活躍。

 

久米田先生のインタビュー記事はこちら

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