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01

Aug. 2022

8月号 「ハウスダスト中のカビと細菌」

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みなさんは、私達の住まいにはいったいどのくらいのカビがいると思いますか。実は、平均的な住まいの場合、室内の空気中には数百個/㎥のカビの胞子が飛んでいます。

それらは一体どこからくるのかというと、主に外気とともにやってきます。土壌にはたくさんのカビが住んでいて、それらが風に乗って、あるいは衣服や靴に付いて、住まいの中に入ってきます。

住まいのカビはどこからやってくる

あるいは、住まいの中でカビが発育して、小さなカビが生えることもあります。お風呂場やエアコン、窓際の結露など、局所的にでも湿度が高いところはカビが生えやすく、胞子を産み出していることがあります。

 

空中を飛んでいるカビの胞子は、時間が経つと下へ落ちてきます。空気の流れがない場合、1時間で約180 cm落下します。そして、床の上や本棚の上に溜まるのです。溜まった胞子は風や人の動きとともに、また空気中に舞い上がります。これらのカビがいわゆるハウスダストの一部となります。

カビとハウスダスト

 

では、ハウスダストの中で、カビの胞子はどのくらい生きているのでしょう。もちろん、カビの種類によって異なりますが、これが結構長く生きているようなのです。

住まいから一番多く検出されるアオカビで2〜8ヶ月、乾燥に弱いクロカビは1〜4ヶ月、そして、乾燥に強いカワキコウジカビなどは数年間も生きている可能性があります。

カビの生存期間

 

ハウスダストの中の微生物としては、カビ以外に細菌もあります。細菌もカビと同様、外気とともに住まいの中に入ってきます。細菌の場合の特徴は、ヒトやペットなど動物由来のものも多数含まれていることです。

皮膚、粘膜、口腔、腸管内などに私達はたくさんの細菌を保有し共存しています。そのため、住まいでは同居人数が多いほど、ハウスダスト中の細菌の種類の数も多くなるといわれています。

 

人は一日のうち、住まいで過ごす時間が思いのほか長いものです。それは、ハウスダストのある環境にさらされている時間が長いということでもあります。

これは、私達の健康にどういう影響を与えているのでしょう。

 

非常に多くのカビにさらされた子供はアレルギー性鼻炎を発症するリスクが50%程度高くなることや、カビの生えた湿気の多い環境で長時間働くと喘息を引き起こすリスクが高くなることなどが報告されています。

一方で、幼少期に多くの種類のカビや細菌にさらされた子供より、さらされなかった子供のほうが、後年、喘息に発展するリスクが高いという報告もあります。

 

つまり、極端に多すぎても少なすぎてもよくないのかもしれません。

ハウスダストの中の微生物とヒトの免疫系がどのように相互作用するのか、そのメカニズムについては、今後の解明が待たれています。

 



執筆者プロフィール

北海道大学獣医学部ご卒業後、旧大阪府立公衆衛生研究所において、女性で初めてとなる副所長兼感染症部長を務められた。現在は、日本防菌防黴学会理事、日本食品微生物学会理事など多方面でご活躍。

 


【専門家コラム】

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