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01

Feb. 2022

2月号「カビ毒が怖い!?」

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うっかりカビが生えた食品を食べてしまったこと、ありませんか。なんだか味がおかしかったけれど飲み込んじゃった。それって大丈夫?
このように、たいていの人はカビを食べてしまって、カビ毒が心配になります。逆にいえば、カビを食べなければ、カビ毒を心配しません。果たして、カビ毒はカビを食べない限り安心なのでしょうか。
今月号では、カビ毒について、お話します。

 

カビ毒にはいろいろな種類がありますが、一番有名なのはアスペルギルス・フラブスなどのコウジカビが産生する「アフラトキシン」です。強い発がん性があり、ピーナッツやコーン、アーモンドなど豆類や穀類から検出されます。
他にはフザリウム属などのアカカビが産生する「デオキシニバレノール」があり、麦やトウモロコシから検出されます。たくさん食べると嘔吐や食欲不振を引き起こし、長く食べ続けると免疫系に影響が出てきます。
また、ペニシリウム属などのアオカビが産生する「パツリン」などがあります。主にリンゴを汚染し、たくさん食べると消化管の出血や潰瘍を起こします。

 

これら3種類のカビ毒は、現在、わが国の食品衛生法でそれぞれの対象食品に対して基準値が設けられており、輸入食品や市販食品を検査し、その汚染状況が監視されています。

カビ毒の種類

さて、それでは、これらのカビ毒を産生するカビは一体どこにいるのでしょう。

 

実は、主には農作物を育てている栽培土壌に生息しています。収穫期が近づいたり、干ばつなどのストレスがかかったりすると、農作物は植物としての抵抗力が低下し、カビの侵入を許してしまいます。カビはそれを狙っているのです。
そして、カビの侵入により産生されたカビ毒はたいへん熱に強いものが多いため、一旦作られてしまうと加工や加熱調理を行ってもなかなか取り除くことができません。

 

しかし、カビ毒がほんの少しでも作られてしまったからといって農産物を全部廃棄処分にすると、世界はたちまち食糧難に陥ってしまいます。そこで、多くの国では、個々のカビ毒について、科学的にヒトの健康影響に対するリスク評価を行い、これくらいまでなら大丈夫という量的な基準を決めているのです。

食べ物に侵入するカビ

 

このように、カビ毒に関しては、カビを食べなくても日常的に摂取する可能性があります。
誤って食べてしまったカビより、知らず知らずのうちに食べているカビ毒の方が実は心配かもしれませんね。



執筆者プロフィール

北海道大学獣医学部ご卒業後、旧大阪府立公衆衛生研究所において、女性で初めてとなる副所長兼感染症部長を務められた。現在は、日本防菌防黴学会理事、日本食品微生物学会理事など多方面でご活躍。

 
 


【専門家コラム】

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