04
Jan. 2021
衛生 情報局
知ってる?抗生物質のこと
ウイルスに抗生物質は効かない
風邪をひいたとき、抗生物質が欲しくて病院に行ったのに結局処方してもらえなかった…という経験、ありませんか?実は抗生物質は細菌に対して効果を発揮するものであり、風邪の主な原因であるウイルスに対しては効果がありません。
しかし国立国際医療研究センター病院が行ったアンケートによると、「抗菌薬・抗生物質はウイルスをやっつける」と思っている人が全体の約半数、「抗菌薬・抗生物質は風邪に効果がある」と思っている人が全体の約1/3おり、抗生物質に対して誤った認識をしている人も少なくないことが分かります(図①)。
それではなぜ、ウイルスには抗生物質が効かないのでしょうか。このことを説明するために、まずは細菌とウイルスの違いを明らかにしていきましょう。
細菌とウイルスの違い
①大きさ
細菌の大きさは㎛(マイクロメートル)を用いて表されます。㎛は1㎜の1000分の1の単位です。一方、ウイルスの大きさは㎚(ナノメートル)を用いて表されます。㎚は㎛のさらに1000分の1の単位です。
②増えかた
細菌は単体でも生き残れる仕組みを持っており、栄養さえあれば自分で増えていくことが出来ます。一方、ウイルスは単体では生き残れないため、生物の細胞に寄生し、その細胞の機能を利用して増殖していきます。
抗生物質が細菌だけに効く理由とは
それでは、どうして抗生物質は細菌には効果がある一方で、細胞内にいるウイルスに対しては効果がないのでしょうか。
その理由は細菌と細胞の構造の違いにあります。細菌はまわりが細胞壁で覆われていますが、細胞には細胞壁が存在しません。この違いをうまく利用して、世界初の抗生物質は作られました。この抗生物質には細胞壁の合成を阻害する物質が含まれているため、ヒトの細胞を攻撃することなく細菌にダメージを与えることが出来ます。
現在ではこのほかにも、タンパク質の合成を阻害する効果のある抗生物質やDNAの合成を阻害する効果のある抗生物質も存在していますが、いずれも細胞ではなく細菌にのみ効果を発揮するものです。
正しく知って、正しく治そう
一般的に風邪と呼ばれる症状になったとき、その多くはウイルスが原因となって引き起こされています。しかし、すべての風邪の原因がウイルスかというとそういうわけではありません。溶連菌感染症やマイコプラズマ感染症などは細菌が原因となって引き起こされるもので、これらは抗生物質を使って治療することが出来ます。つまり、「多くの風邪には抗生物質が効かないけれど、中には抗生物質が効く風邪もある」ということです。
細菌性の風邪かウイルス性の風邪かによって治療法や飲むべき薬は変わってきます。
風邪をひいたときは自己判断せず、お医者さんに診てもらって適切な治療を受けるようにしましょう。
参考文献
・国立研究開発法人国立国際医療研究センター病院AMR臨床リファレンスセンター「抗菌薬意識調査レポート2020」http://amr.ncgm.go.jp/pdf/20201008_report_press.pdf(2020年12月4日アクセス)。
・厚生労働省HP「広報誌『厚生労働』」https://www.mhlw.go.jp/houdou_kouhou/kouhou_shuppan/magazine/2018/09_01.html(2020年12月4日アクセス)。
戻る